ビジネス・経済
この一冊で10年後の自動車のあり方がすべてわかる!
迷走する自動車メーカーへ
かつてのトヨタ契約ドライバー徳大寺有恒が
残りの人生を賭けた遺言
プロローグより
『30度バンク』に飛び込んだあの日
本書の表題を『指さして言う TOYOTAへ』とするのは少々煽情的かな、とためらっていたが、この激動の時代にモノ申すとなると、これくらいの攻撃性というか、まず己れを奮い立たせるくらいの集中力が必要だ、と気付いて、これで通すことにした。そう心を固めるのには、ひとつのきっかけがあった。
2010年3月20日、富士スピードウェイ(FSW)で催されたイタリー車の走行会に赴いた際、今ではメモリアルゾーンとなっている「30度バンク」に足を踏み入れた。
今の時代、このFSWの名物である長いストレートの終点、第1コーナーの向こうに、まるで白い墓標が肩を寄せ合うかのようにして、コースの外枠を縁取っているのを、ご存知あるまい。
30度バンク。
レース中のアクシデントを契機に立ち入り禁止になり廃墟化していたのを、トヨタが経営母体となったのを機に、その周辺をモータースポーツファンのための記念公園に化粧直ししていた。
かつての走行路がその当時のまま残っていた。垂直のコンクリートの壁のようだった。こんなところを、人間とレースマシンが一体となってよく走れたものだ、それもライヴァルたちと競いながら。
長いストレートから、谷底に飛び込んだ時の恐怖と勇気の記憶が甦る。「ウワーッ」と思いっきり叫びながら突入したら、なんとかくぐり抜けられた。確か、ここで2度ほどレースをやった。
ひょっとして、トヨタの今の状態はこれに似てはいないか―
長いストレートを加速するだけ加速したあとで、今回のリコール問題への対応など、いわば強烈なブレーキング操作を求められている所など…。さまざまな想いが湧き上がってきた。
あのころの攻撃的な気分を甦らせて、本書にとりかかってみた。すると、トヨタ混迷の根源が、私なりに見えてきた。それは、ただ単にトヨタが直面する難局というより、自動車が生まれ、育ち、成熟し、そこから先の課題と感応し合う世界を舞台とした歴史との関わりだ、と気付かされたのである。だから私は今、はじめてのレースでスターティンググリッドについた時の高揚感と、緊張感を思い出しながら、アクセルペダルに足をのせた。
第1章 トヨタの異変
- トヨタからはじまった、わが「創業期」の日々
- 自動車の進化とは何であるか
- メーカーへ。やり残したことはないか
- トヨタの成長を支えたのは「販売の技術力」
- このトヨタの異変からなにが学べるか
- ハイブリッド車の功罪から軽量化という次のテーマが見える
- エンジン改良で新しい時代到来の予感
第2章 歴史に学べ!繰り返す産業革命
- 夢に挑戦した時代、自動車は「金鉱」だった
- 創業者・豊田家の宿命
- 自動車づくりは安いコストの国へ
- 高級車づくりの険しい道をあえて選んだ報酬
- ピンチの時こそ、自社の歴史に学べ
- GMの下請け会社にされかかったトヨタ
第3章 TN戦争の前と後
- 『主査・中村健也』と初代クラウン
- TN戦争勃発前夜
- カローラvsサニーのセールス合戦
第4章 日本車の生きた歴史から次のあり方を考える
- ヨーロッパに学べ!人間の想いの入ったクルマとはなにか
- 「競走」しないで魅力あるクルマがつくれるのか!
- クルマの社会所有が産業を萎縮させる
- 一人走りは現代ストレス社会の特効薬
- 日本自動車文化の正と負
第5章 トヨタの昨日、今日、明日
- 自動車各社の立ち位置は不変か?
- コンピュータ任せのクルマづくり
- イギリス車の衰亡を教訓に
- トヨタはトップが似合わない
- クルマ抜きでその国の発展が語れるか
- なぜタンドラをつくったのか
- トヨタ車を扱う現場の声が聴こえる
第6章 「TOYOTA」は「トヨタ」に学べ
- 「トヨエース」というトヨタ車の原点
- あなたは「クルマに主体的にかかわっている」だろうか
- クルマのプロになってほしい
- 現代のクルマへの大いなるヒント
特別トーク(徳大寺有恒×舘内 端)
次世代車に乗り遅れたTOYOTAの闇と誤算
トピックス
産経新聞で紹介されました!
「ねこ抱っこ べろーん」が、8月30日付けの産経新聞(関西)夕刊にて紹介されました。